ナノの部品を組み立てる場をつくる―電場応答性柱状液晶(岸川) 

 液晶状態で円筒形の分子集合体(カラム)を作っているものには,電場に応答しその分極方向を変えるものがあります。この種のカラムの方向を揃えて敷き詰めたシートに微小電極で電圧をかけると,電圧をかけた部分のみが分極した状態になります。たとえば,円を描くようにこのシート状に電圧をかけると,円の形に分極カラムが並んだ状態(潜像)ができます。ここに,異なる分子を作用させると円形に分子が並びます(現像されます)。これらの分子を重合することにより,円形の重合体(ナノの部品)ができます。




J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 2565

Phys. Rev. E 2005, 72, 020701

J. Mater. Chem. 2006, 16, 1


次世代液晶ディスプレイの基礎研究―二軸性ネマチック相実現への挑戦(岸川)

 現在のディスプレイは棒状分子(一軸性ネマチック液晶相)が電圧で方向を変える仕組みを利用していますが,その動きは棒状分子の方向をガラス面に対して垂直と水平を大きく切り替える動きなので,スイッチング速度に限界があると言われています。これを根本的に変えるものが二軸性ネマチック液晶相です。棒状分子が第1の軸(分子長軸)を一方向に保ったまま第2の軸(分子短軸方向)の方向を切り替える方式です。この方式は他の分子との衝突が少なく,スムーズで高速なスイッチングが可能であると言われています。当研究室では,棒状分子において分子間力を利用した二軸性ネマチック相の実現に成功し,その研究を更に続けています。




J. Mater. Chem. C, 2015, 3, 3574

Soft Matter, 2011, 7, 5176

Soft Matter, 2011, 7, 7532


液晶にもっとねじれを!―大きなねじるパワーをもつキラルドーパントの設計・合成(岸川)

 キラルドーパントは,液晶ディスプレイのネマチック液晶層に安定したねじれを作るために使われ,重要な役割をしています。また,次世代高速液晶表示素子を実現すると言われているブルー相という液晶相を発現するためには,さらに効率的に大きなねじれを誘起するキラルドーパントが必要とされています。ところが,効率的にねじれを誘起する分子形状などが十分にわかっていません。当研究室では,独自の新しい分子設計により,極めて効率の良いキラルドーパントを開発することに成功しています。




J. Phys. Chem. B 2014, 118, 10319

Soft Matter, 2014, 10, 6582

Liq. Cryst. 2014, 41, 839


生物の発色機構から創発したメラニン系構造色材料の作製 (桑折)

 孔雀の羽は,生体内で合成されるメラニン顆粒が形成する微細構造による構造色により綺麗な発色をしています。当研究室では,メラニン顆粒の生合成に着目し,ポリドーパミンを素材としたメラニン粒子を独自に開発し,それらを集積したメラニン系構造色材料についての研究を行っています。サイズが均一な粒子由来の構造色と,黒色による余分な散乱光の吸収が同時に達成され,彩度の高い構造発色が可能です。粒子設計で構造色の角度依存性の制御もできます。最近は,昆虫の発色から発想した金属光沢材料の開発や,メラニンのアップサイクルに関する研究も行っています。


NHK World, Science View(2021年8月25日放送)

オンデマンドで視聴できます

https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/ondemand/video/2015263/


元素の特徴を生かした新奇磁性ソフト材料の開発と機能創発(桑折)

 ランタノイド元素は,外殻軌道に遮蔽された4f軌道に存在する価電子由来の発光特性や磁気特性を示します。当研究室では,ランタノイド元素の中でも優れた磁気特性を有するホルミウム(Ho)に着目した新奇磁性ソフト材料の開発を行っています。これまでに,ホルミウム複合高分子を基盤とするフルカラー磁性粒子や磁性MOF粒子の作製を達成しました。最近は,ホルミウムを中心金属とする7配位型Ho錯体の自己集合を利用した超分子球アレイの作製など,他に例のない研究に展開しています。