環境調和の観点からタンパク質を構成するポリペプチドから学び,それらを模倣したペプチドミメティック(ペプチド模倣)の分子設計により超分子を合成し,新たな機能性分子の開発を目指します。酵素としての触媒機能発現には高次構造の形成が重要であり,弱い結合である水素結合などの弱い分子間相互作用が活用されています。

 20世紀の有機合成化学に関する膨大な研究の蓄積により共有結合を形成する反応がデータベースに収められ,コンピュータで望む反応を検索することができます。しかしながら,共有結合より弱い分子間相互さようについての合成的な検討は不十分です。これから21世紀の合成化学のひとつの方向性として,共有結合ではない弱い結合を高度な分子設計にもとづいて分子間や分子内部の望む位置で働かせることで高次構造や分子集合体の構築(合成)する手法を確立することは21世紀の有機合成化学の重要な研究課題であると考えています。

 

 

・フォルダマー機能性分子としての人工ペプチドの合成と高次構造

弱い分子間相互作用で高次構造を形成するオリゴマーをフォルダマーと呼びます。ペプチドのα−ヘリックスやDNAの二重らせんは,天然のフォルダマーと云えます。我々は,アミノ酸やその誘導体に注目しながらペプチドミメティック(ペプチド模倣の)超分子としてフォルダマーを合成しその機能について研究しています。2−アミノフェノキシ酢酸類のオリゴマーが天然のポリペプチドにない2回らせん構造を形成することを見出しました。現在,これらの研究は溶液系での分子認識として展開し,その特性や機能について研究しています。

 

 TETL34132-cover-artwork

  

 

 この研究成果の発表論文が「Tetrahedron Letters」の表紙に選ばれました。

 

 

 

・環状ペプチドミメティックな機能性ホスト分子の合成と分子認識

 生体内において環状ペプチドはイオノフォア

などの重要な機能を果たしています。我々はフ

ォルダマーの特徴を活かしながら,C3対称性

のキラルなボウル型化合物やそれらを組み合わ

せたカプセル分子について研究を行っています。

C3ボウル型化合物群:フォルダマーで紹介した

2−アミノフェノキシ酢酸類の環状三量体は

水素結合によりボウル型化合物となりクロロホ

ルムを取り込みます。その他のアミノ酸誘導体

についてもボウル型化合物について合成やその

ホスト−ゲスト化学について研究を行っていま

す。

 

 

 

 さらに,ボウル型化合物は組み合わせることによりカプセル型分子へと展開できます。これら分子カプセルは,アミノ酸の立体化学にもとづくキラリティーをもつため不斉識別能や分子フラスコとして反応場やドラッグデリバリーシステムへの応用が期待されます。

 

 

 以上のように,生体構成分子であるアミノ酸(ペプチド類)を材料にして新しい機能性分子の合成とその機能について研究しています。

 

 

【ホームに戻る】