1トンの綿と1トンの鉄では本当に重さは同じ?
子供のころ、「1トンの綿と1トンの鉄とでどっちが重い?」なんていうなぞなぞをやったことがあるのではないでしょうか。「鉄!」と答えて「1トンだからどっちも同じ!」と言われてくやしい思いをした思い出をもっている人もいることでしょう。
ところが、本当は1トンの鉄の方が重いのです。ヒントを出しましょう。もし、綿と鉄を水中で比べたらどうですか。綿の“浮力”の方が鉄の浮力より大きいので綿の方が軽くなります。空気によっても浮力は生じるのです。風船が浮くのも空気による浮力のためですよね。だから空気中でも綿の方が軽くなるのです。
物理学では、物の量は“質量”で示します。単位はKgとかトンです。これは計る場所によって変わるものではありません。物の量を絶対的に表せます。地上でも、月面上でも変わるものではありません。一方、重さは物が地面方向に引きつけられる力です。ですから重さは計る場所によって異なります。水中では“重さ”は軽くなるでしょう。「金1Kg何円」と言ったときのKgは質量のはずです。そうでなければ、公正な取引は成り立ちませんね。ですから、この問題の1トンは質量を表していると考えるべきなのです。
さて、では1トンの鉄は1トンの綿よりどのくらい重いのでしょうか。アルキメデスの原理を思いだして下さい。「水中の物は、それが排除した水の重さだけ軽くなる」でしたね。この場合の“重さ”には空気の浮力は考えません。また、この原理は水以外の媒体にも適用できます。綿1トンの体積は約1,200,000 cm3(綿の材質のみの体積です)、鉄1トンの体積は130,000 cm3です。空気の“重さ”は1cm3あたり0.0012
gです。これらから、綿の浮力は1,400 g、鉄の浮力は160 gということになります。したがって、空気中では鉄の方が約1.2 Kg重いことになります。
類題:地球で綿と鉄をそれぞれ正確に1kgずつはかりとって月に持って行って重さを比べたらどちらが重いか。