研究関係の受賞


高橋亮治

触媒学会 平成16年度奨励賞受賞 「ゾルゲル法におけるシリカ系多孔体触媒の細孔制御」

 高橋氏は、有機物共存下でのゾルゲル過程におけるゲル化のタイミングを精密に制御して種々の多孔性触媒材料を開発し、その特徴を活かして種々の触媒反応を行った。クエン酸などの有機物共存下でのゾルゲル法による調製や、湿潤シリカゲルにニッケルを添加する際に均一沈殿法を適用するなどの手法によって細孔径やニッケル粒子径の精密制御を可能とした。また、ゾルゲル過程における反応挙動を29Si MAS-NMR, SAXSをはじめとする方法により詳細に解析し、酸化物多孔体生成の機構を解明した。これらの手法によって、Ni/SiO2、SiO2-Al2O3、SiO2-ZrO2などの触媒を調製し、メタンのCO2リフォーミング、ベンゼンの水素化、クメンのクラッキングなどに適用して、それらが優れた触媒性能をもつことを明らかにした。
 以上のように、高橋氏はシリカをはじめとする酸化物多孔体触媒の細孔の生成機構を解明し、その成果を細孔構造の精密制御につなげ、先導的で意義のある顕著な業績を挙げた。よって同氏の業績は触媒学会奨励賞に値するものと認めた。

 触媒,Vol.47, No2, より


佐藤智司 

触媒学会 平成9年度奨励賞受賞「CVD法による固体酸触媒の調製に関する研究」

 佐藤氏は、化学蒸着(CVD)法により調製した触媒が、従来の含浸法により調製した触媒と比較して高活性、高選択性であることを見いだし、その触媒物性と活性との関係を詳細に検討した。トリエトキシボランの蒸着により調製したシリカゲル、あるいは、アルミナ担持酸化ホウ素は、シクロヘキサノンオキシムの気相ベックマン転移において、ε-カムロラクタムへの選択率96%(添加率98%)を与えた。テトラエトキシシランを蒸着させたアルミナが1-ブテンの異性化やクメンの分解に高い活性を示した。これらの触媒では、シリカ相の形成とともにアルミナのルイス酸点がブレンステッド酸点に転化することを、MAS-NMR等の手段で明らかにしている。また、シリカゲルに塩化アルミニウムを蒸着したものが、ベンゼンのシクロヘキシル化に高い活性、選択性を示すことを見いだした。また、蒸着した塩化アルミニウムの状態を27Al MAS-NMRにより測定し、アルミニウム成分の蒸着温度に依存して単量体あるいは二量体で存在するが、触媒として有効な成分は二量体であることを明らかにした。
 以上のように、佐藤氏の業績はCVD法による調整法が触媒調整法として優れていることを実証するとともに、調製した触媒の表面構造を解析することにより、触媒化学の発展に貢献したものであって、触媒学会奨励賞に値するものと認められた。

 触媒,Vol.40, No2, より