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精密有機化学研究室

http://chem.tf.chiba-u.jp/gacb06/
sakamoto mino yoshida
教授 坂 本 昌 巳
(工学部5号棟301号室)
准教授 三 野   孝
(工学部6号棟205号室)
特任助教 吉 田 泰 志
(工学部6号棟205号室)

研究内容

自然と共生できるような新しい有機化学の手法を用いた生理活性物質・医薬品やその中間体の合成法の開発に関する研究を行っており,3名のスタッフが中心となって次のような研究プロジェクトを推進しています。

  1. 励起状態の分子の挙動解析に関する研究(坂本・三野・吉田)

    有機化合物が電子遷移のエネルギーに必要な電磁波(光エネルギー) を吸収すると,反応性に富む励起状態の分子が生成します。励起分子は非常に短い寿命しかありませんが,基底状態の分子とはまったく異なる面白い反応挙動を示します。私たちは,新しい光反応を開発し,熱反応では合成できない付加価値の高い有機化合物を合成しています。この分野の研究は,発光材料や光メモリー素子,感光性材料などとも深く関係しています。

  2. 分子集合体(主に有機結晶)の特性を利用した新しい生体関連分子の合成とその応用(坂本・三野・吉田)

    溶液中でいろいろな形をしている有機分子が結晶化すると,総ての分子は同じ形で規則正しく配列します。この時,キラリティーを持たなかった分子が,結晶中でキラリティーを発現することがあります。これは生命の起源を説明する一つの仮説でもあります。私たちは,このような性質を持つ結晶を利用することにより,アキラルな有機分子やラセミ体から光学活性な化合物を効率よく,しかも環境にも優しい条件で,合成する方法論の開発を行なっています。例えば,下図に示した化合物やその類似体は薬理活性を示すことが知られており,本方法論を用いることにより,高い光学純度で得られることを明らかにしました。

  3. 次世代型キラル有機分子の開発とその応用(三野・坂本・吉田)

    分子のキラリティーは中心性不斉(いわゆる不斉炭素など)が存在しなくても,分子内に回転軸や面の存在によっても発現します。私たちは最近,窒素と炭素の結合間に存在する回転軸にキラリティーが安定に存在する第3級アミン群を開発しました。また,これらの有機分子が,医薬品などの光学活性な化合物の合成において重要なプロセスである触媒的不斉反応における遷移金属触媒のキラル配位子として利用できることを明らかにしました。(下図は開発した新しいキラルパラジウム触媒の一例)

  4. 分子構築のための超高活性有機金属触媒の開発(三野・坂本・吉田)

    医薬品,農薬,液晶など機能性有機分子の構築には炭素-炭素結合を中心とした結合形成が必要です。一般的な構築法としては,有機化合物である配位子と自然界に僅かしか存在しない遷移金属から構成される有機金属錯体を触媒とする合成法が用いられています。私たちは,限りある資源を有効に利用するために,基礎的研究として,その遷移金属の使用量を著しく低減することが可能になる新しい遷移金属触媒の開発を行なっています。

  5. 有機分子触媒を用いる新規不斉反応開発(吉田・坂本・三野)

    キラルな化合物は医薬品や香料に広く用いられているものの,エナンチオマー間で生理活性が異なることがあるため,その一方のみを高い純度で合成する不斉合成は重要です。その効率的手法として,近年では,金属を含まない触媒である有機分子触媒による不斉合成が注目されています。有機分子触媒は,比較的安価,低毒性,空気や水に安定であるなどの特徴があり,金属触媒を用いた場合に危惧される生成物の金属汚染も起こりません。私たちは,新規有機分子触媒の開発と,それによって初めて達成される反応の開発を目指しています。これまでに,有機分子触媒3を用いた極性転換反応により,α−イミノエステル1とα,β−不飽和カルボニル化合物2のエナンチオ選択的マイケル反応を達成しています。本生成物5はキラルアミノ酸やδ−ラクトンなど有用な化合物の合成に応用可能です。

  6. 新規キラル超原子価ヨウ素(V)試薬の開発と応用(吉田・坂本・三野)

    ヨウ素原子は,その小さな電気陰性度や大きな原子半径等の特徴から,オクテット則を満たす8個より多くの電子を有する,超原子価状態をとることが可能です。超原子価ヨウ素試薬は,メタルフリーで温和な酸化剤として広く用いられており,キラルな超原子価ヨウ素試薬を用いた不斉酸化反応,及びその有機分子触媒化も近年盛んに研究されています。しかしながら,3価の超原子価ヨウ素試薬を用いた不斉反応は盛んに研究されている一方,5価の超原子価ヨウ素試薬に関する報告は限られています。私たちはこれまでに,5価のキラル超原子価ヨウ素試薬7の開発と,その不斉反応への応用を報告しており,現在,このキラル試薬を用いた新規不斉反応の開発を行っています。