0.1Mアンモニア水中に前駆体薄膜である糖複合化LDHを浸漬するだけで高度なZnO(002)配向膜が作製できます。
1.アルコキシドを用いない溶液攪拌と透析を用いた新しいゾル・ゲルプロセスの開発と応用 | |||||
アルコキシドは金属塩化物とアルコールの反応で合成されます。我々は、金属塩化物から直接ゲルやゾルを100℃以下の常圧条件下の反応で調製し機能性薄膜作製などに応用する手法を開発しました。 ●高い安定性を有するチタン酸化物ナノ粒子分散ゾルの調製とNbドーピングによる物性制御 ・塩化チタン(TiCl3)のエチレングリコール溶液を室温大気中で攪拌した後、透析膜を用いて透析し、100℃以下の温度で加熱静置することでアナターゼ型TiO2ナノ粒子がH2O中に安定に分散したゾルやゲルを得ることができます。また、下図のXRDに示したように高い結晶性も兼ね備えているます。 アナターゼTiO2ゾル アナターゼゲル ゾル・ゲル中粒子のXRDパターン ・塩化チタンと塩化ニオブ(NbCl5)を原料として用い上記と同じ合成方法でNbドープTiO2ゾルやゲルをNbドープ量が30atomic%までの広い組成領域で溶液の攪拌と透析で簡単に合成できます。 本合成法で調製したNb10%ドープTiO2ナノ粒子は、還元処理や100℃以上の高温処理をしていないにもかかわらずキャリア電子量増大により青い着色をしています。 TiO2ナノ粒子 Nb10%ドープTiO2ナノ粒子 応用想定分野: 透明導電性薄膜作製 ・ 化粧品やガラスなどの紫外-近赤外遮断材料 ・ 光触媒 など。 ●Sbドープ酸化スズナノ粒子分散ゾルの室温合成 ・塩化スズ(SnCl2)と塩化アンチモン(SbCl3)を溶解した水溶液を大気中で攪拌した後にセルロースチューブで透析を行うことでSbドープSnO2ナノ粒子のゾルやゲルを物性に影響を与えやすい塩基を用いることなく室温でのプロセスのみで得ることができます。また、コーティング液としても用いることができます。 SnO2ゲル SnO2ゾル 室温のプロセスで合成したSnO2ゲルのXRDパターン 応用想定分野: 透明導電性薄膜作製 ・ ガラスなどの紫外-近赤外遮断材料 など。 ●酸化セリウムナノ粒子分散ゾルとフォトクロミズム特性 ・硝酸セリウム(Ce(NO3)3)のエチレングリコールやジエチレングリコール溶液にアンモニア水を加え75℃で静置した後で透析を行うことでCeO2ナノ粒子が安定に分散し高い透明性を有するゾルを得ることができる合成法を開発しました。また、反応温度などを変えることで球状CeO2粒子も簡単に合成できます。化粧品などのUVカット材や精密研磨材料としての応用が期待されます。 CeO2ゾル 球状CeO2粒子のSEM像 合成温度で粒径が異なる CeO2ゾルのXRDパターン さらに我々は、CeO2ナノ粒子がフォトクロミズムを示す新しい現象を発見しました。
応用想定分野: 化粧品などの紫外線遮断材料 ・ 精密研磨剤 ・ フォトクロミズムを利用した情報記録材料 ・ 太陽光エネルギー変換材料 など。 ●酸化チタン-有機複合体ナノ粒子の多段階フォトクロミズム 近日公開予定 |
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2.新しい原理による環境応答性を有する構造色材料の開発 | |||||
・粒子の規則的な配列構造による光の干渉で着色を示す構造色は、耐久性や発色の鮮やかさなどで注目を集めています。特に単分散の球状粒子の細密充填構造を利用した構造色材料が広く研究されています。この場合、構造色を制御するには、球状粒子の粒径を制御する必要があります。また、xyzの3方向の積層周期を厳密にコントロールする必要がります。 我々は、二次元的異方性を有する板状粒子の一次元積層構造体による構造色材料を開発しました。層状チタン酸などの板状粒子表面を糖誘導体で修飾することで水素結合形成な水やグリセリンなどの溶媒分子と板状粒子が水素結合で複合構造を形成し規則正しく層状チタン酸板状粒子が積層した構造を形成することを見出しました。さらにその積層間隔は、複合化するグリセリンなどの添加量で自由に制御できます。 この積層構造体は粒子間に水などの溶媒分子を取り込むことで可逆的に[膨潤↔ゲル化↔解膠ゾル化]を繰り返すことを見出しました。 糖誘導体で表面修飾した層状チタン酸粒子とグリセリンの複合体はグリセリン添加量によりその発色を自由に制御できます。 我々の研究グループでは、糖の機能に着目し無機合成反応の高度化やセラミックス粒子の高機能化に積極的に応用していきます。 応用想定分野: 無機系吸水材料 ・ 化粧品などの着色材料 ・ 分子認識センサー ・ 近赤外遮断材料 ・ 糖などの分子認識材料 ・ 光学分割剤 ・ 無機ナノ粒子の凝集体-安定分散体の可逆的制御剤 など。 |
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3.形態や大きさの制御された粒子の特性を生かした機能性薄膜の開発 | |||||
●配向制御AlドープZnO薄膜 AlドープZnO薄膜は透明導電性薄膜や赤外線遮断膜などとしての応用の期待されている材料です。物性の制御のためには薄膜中のZnO結晶子の配向の制御が必要となります。 我々の研究グループでは、溶液のガラス基板上でのコーティングによる非常に簡便な方法で高度に配向制御されたAlドープZnO薄膜を作製する方法について検討を進めています。糖誘導体を用いた簡単な合成法により層状複水酸化物(LDH)粒子を得て95℃での低温加熱処理で、下の写真のような粒径の揃ったロッド状や円盤状のZnO粒子を得ることに成功しています。 下記のXRDパターンについて説明します。 ①グルコースにより分散安定化したZn2+-Al3+系層状複水酸化物(LDH)分散ゾルをガラスに塗布乾燥すると一番下のXRDパターンを示す薄膜が得られます。 ②このLDH薄膜を焼成すると一番上の(002)ピークのみが強くみられる、強い(002)配向AlドープZnO薄膜が得られます。 ③LDHゾルを95℃で加熱して得たロッド状ZnO粒子をガラス基盤に塗布すると(100)配向)AlドープZnO薄膜が得られます。 この様に糖により分散安定化したLDHゾルを使うことで、(002)配向と(100)配向を有する AlドープZnO薄膜を自由に作り分けることができました。 応用想定分野: ・ 化粧品などのUVカット材料 ・ 近赤外遮断材料 ・ 透明導電性薄膜 ・ 光触媒膜 など。 |
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4.板状粒子と親水性高分子の複合化による光応答高吸水性ゲル |
●板状粒子-PVA複合体の膨潤特性 膨潤前 膨潤後 無機酸化物の板状の平板な粒子はランダムに配向させるとたくさんの粒子間の空隙が出来てそこへ多くの溶媒をためることが出来ます。この板状の粒子に親水性高分子のPVAを複合化することで板状粒子間の隙間に水を吸蔵しさらにPVAが粒子間を架橋するとともに水分子とも結合することで非常に高い膨潤能を有する板状粒子-PVA複合体を得ることが出来ました。 最大で自重の100倍以上の水を吸収することが出来ます! この複合体中の板状粒子に光触媒活性を付与すると、光照射で膨潤の度合いを制御できる光制御型高吸水性無機-高分子複合ゲルを作製できます。 応用想定分野: ・ ドラッグデリバリーシステム |