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環境適合高分子材料

http://chem.tf.chiba-u.jp/gacb04/
sasanuma
 
准教授 笹沼 裕二
(5 号棟304 号室)
 

研究内容

高分子のコンホメーション特性−構造−物性−機能の相関の解明と、未知の高分子の構造・物性・機能をその原子配列から予測するという分子設計を、モデル化合物の核磁気共鳴法の実験と分子軌道法計算、高分子の構造・物性の実験と統計力学計算で行っています。私たちの研究のキーワードは「相互作用」です。種々のヘテロ元素が現す分子内・分子間相互作用が高分子の構造・物性・機能を実質的に支配しています。この相互作用を明らかにし、高分子の分子設計に利用しています。

  1. 環境調和型ポリエステル

    ポリエチレンテレフタレート(PET)は衣料、ボトル、エンジニアリングプラスチックスとして使われています。PET はリサイクルされている環境に優しい高分子です。1941 年に英国で特許が取られてから70 年ほどたち、ようやく私たちの手でPETの分子特性・構造・物性の相関性を明らかにすることができました。PET に次ぎ、高剛性フィルムの素材であるポリエチレンナフタレートや、原料をトウモロコシから発酵法で生産することで工業化できたポリトリメチレンテレフタレート、重要なエンジニアリングプラスチックスであるポリブチレンテレフタレート、さらに生分解性ポリマーである、ポリエチレンマロネート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリ3-ヒドロキシ酪酸に研究を拡げています。芳香族ポリエステルの酸素を硫黄で置換した構造をもつポリチオエステル、ポリジチオエステルも扱っています。硫黄を含む高分子には耐熱性をはじめ優れた物性が期待できます。
  2. 窒素と異種のヘテロ元素を含む高分子

    ポリエチレンイミン(PEI)は遺伝子搬送ポリマーの代表です。DNA を伴い細胞膜を通ることができます。例えば、癌の遺伝子治療や再生医学で、必要な遺伝子を細胞に組み込むことに用いられます。またPEI はポリエチレンオキシド(PEO)やポリエチレンスルフィド(PES)と並びイオン伝導性高分子としても使われています。PEI、PEO、PES については既に私たちが研究してきました。近年、窒素と酸素、窒素と硫黄の異なるヘテロ元素を構造単位に含む未知の高分子の構造と物性を予測しました。これらの高分子を実際に合成し、構造解析と物性評価の実験で予測を実証します。
  3. 高分子溶液論の新展開

    「高分子らしさ」を最も反映する高分子の性質が溶液物性です。その新たな展開を試みています。私たちが築いた電子構造・相互作用からみる高分子観を高分子科学全般と調和させるためには、まず高分子溶液論の精密化が当面の課題です。その研究に着手しました。