研究内容
共用機器センターは、大型分析機器を集中管理している共同利用施設です。化学系を中心とした分析機器が揃っており、工学部だけでなく、自然科学を扱う様々な学部学科の研究者や学生が利用しています。また他大学にも機器を開放し、依頼測定への対応や、幅広い共同研究を行っています。
分子構造解析化学研究室では、有機化学を基盤とした機能性分子の開発と、共用機器センターの大型分析機器を駆使した精密な構造・物性評価を組み合わせた研究を行っています。また学内外の研究者と共同で、様々な化学物質の構造解析や物性評価にも取り組んでいます。
- 結晶多形を利用したキラル有機結晶の探索と制御(桝)
キラリティー(物質の非対称性)が発生するメカニズムの解明やその制御は、生化学や医薬品開発における重要なテーマです。また材料開発の観点では、物質のキラリティーは光学的あるいは電気化学的な特性を変化させるため、記憶素子や非線形光学材料への応用が注目されています。
特に結晶や液晶などの分子集合体においては、アキラル(対称)な分子の立体配座や配列が固定されることでキラリティーが発生・増幅する例が知られています(不斉結晶化、不斉増幅)。こうした「柔軟な」キラリティーは、外部刺激(熱・光・圧力など)によって、その有無や+?を制御し得ると考えられます。
そこで我々は、適切な立体構造を持つ有機低分子コンポーネントを用いて、結晶多形(同じ化合物で結晶構造が異なること)を積極的に利用したキラリティー制御を目指しています。不斉結晶化のモデル化合物を合成し、その結晶化条件のスクリーニングによって様々な結晶を作成します。結晶構造やその性質を、複合的な機器分析によって明らかにし、さらに外部刺激による動的な挙動も観察します。
- 分子間相互作用によるネットワーク構造の構築
立体構造が制御されたシンプルな基本骨格を組み合わせることにより、特徴的な三次元構造を持つ化合物を合成します。また結晶中での自己集合によって、ゲスト分子の取り込みが可能なネットワーク構造を持つ多孔性結晶を構築します。さらにこれを用いて、ゲスト分子の選択的な吸脱着や反応触媒としての利用が可能な機能性有機結晶材料の開発を目指しています(他大学との共同研究)。
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