硫黄は周期律で酸素の下にあり、酸素と同族の

元素です。そのため、酸素と類似な性質(陰イオ

ンになりやすい、陽イオンに攻撃しやすいなど)

を示します。一方、全く異なった性質も併せ持っ

ています。具体的には、多くの酸化状態を取りう

る点や、隣接したカチオン(陽イオン)だけでな

く、アニオン(陰イオン)やラジカル(中性な活

性体)も安定化する、などです。

 このような、硫黄原子に特有な性質を有効か

つ最大限に利用できる試薬や反応の開発と、

生理活性物質や機能性材料の構築へと利用し

ています。

 

 

 

・硫黄の特性を利用した反応試薬の開発と利用

 スルホキシドやスルホンは電子求引性官能基であるため、隣接したプロトンの酸性度を上げたり求電子反応を促進したりする効果が期待できます。また、反応後に脱離することも可能な置換基です。このような性質を利用した新しい試薬として、『MT-Sulfone』が開発されました。この試薬の有用性を高めると共に、更なる利用価値をもとめて研究しています。その結果、さまざまな新規合成反応を開拓しています。とくに電子求引性を活用することで得られる2,2-ジスルホニルオキシランを利用した反応では、さまざまな求核剤との反応が室温下で進行してα-アミノ酸誘導体や生理活性物質の合成が可能となっています。

 

 

 

・含硫黄双性イオン型化合物の反応と機能性材料への応用

 上の反応で得られる双性イオン型化合物は、分子中のXに硫黄原子を導入することも可能です。この双性イオン型化合物自体は生理活性物質ですが、下の図にあるように有色であることからその機能性や反応性にも興味がもたれます。得られた双性イオン型化合物に対する更なる反応を検討したところ、アミンやアルコールやチオラートと反応してα-置換カルボン酸誘導体が得られています。また、ヨウ素と作用させることで、半導体領域での導電性を示す物質となることも明らかにしています。この導電性はXが硫黄のときに特徴的にあらわれることから、ここでも硫黄の性質(酸化・還元能)が生かされた結果と考えています。

 

 

 このほかにも、ヨウ素を利用した反応でも硫黄官能基の興味深い反応が見つかるなど、相乗的に研究を進めています。

 

 

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