不飽和アルコールは、医薬品等の化学品中間体としての利用が期待される。アリルアルコール、ホモアリルアルコールを適当なジオールの片方のOH基の脱離により製造できれば、化学品合成ルートのオプションが広がる。有効な触媒として酸化セリウム、酸化ジルコニウム、希土類酸化物が特定のジオールに対して高い選択性で特定の不飽和アルコールを与えた。
ジルコニア触媒を用いたアルコールからの脱水素二量化による対称ケトンの合成はチッソ化学において工業化されている。本反応がセリア上でも進行し、ジルコニアに比べて高活性であること、反応がアルコールの脱水素、アルドール付加、脱炭酸を経て進行することを明らかにした。更にセリアに鉄を固溶することで著しい活性の向上が見られた。また、アルデヒド、カルボン酸、カルボン酸エステルからも同様にケトン合成が可能である。
フェノールのアルキル化体は、農薬・医薬品等の中間体としての利用が期待される。メタノール、1-プロパノールによるフェノールの気相アルキル化反応において、セリア−マグネシア触媒上で高い選択率で2メチルフェノール、2,6ジメチルフェノール、2nプロピルフェノールを合成できた。
ケトンの液相水素化反応において、クエン酸錯体法で調製した触媒が、その大きなサイズの細孔よりラネー触媒よりも高活性であることを見出した。さらに拡散が反応活性に与える影響について、細孔構造の異なる触媒、分子サイズの異なるケトンを用いることで詳細に検討した。
有機酸法は、有機酸−金属錯体の溶液からアモルファス有機−無機複合体を経て複合酸化物を調製する方法である。このような錯体を用いることにより、低温で均質性の高い複合酸化物系化合物・固溶体・混合物を得ることができ、特に非平衡化合物・固溶体を容易に調製することが可能である。この手法の特にクエン酸を用いた場合について、複合酸化物触媒・担持金属触媒調製に応用した。
マグネシアは岩塩型結晶構造をとる化学的・熱的に比較的安定な塩基性酸化物触媒である。様々な有機酸を用い硝酸マグネシウムとの錯体の溶液を乾燥固化したものを焼成することにより、高い比表面積を持ち異なる細孔構造を持つマグネシアを調製できた。
酸化ニッケル、酸化マグネシウムはともに岩塩型の結晶構造をとり、熱力学的に安定な全律固溶体を形成する。クエン酸錯体法により均質な高表面積固溶体を作製し、Ni-MgO触媒の前駆体とした。これを還元して得られる触媒は、Ni/Mg比や焼成温度に依存して様々な細孔構造、Ni表面積を持つことを明らかにし、担持Ni触媒として有効であることを示した。
酸化アルミニウムと2価遷移金属酸化物は2:1のモル比でスピネル型の化合物を形成する。CuAl2O4について焼成温度と還元挙動、比表面積の関係を明らかにし、メタノールの脱水素二量化反応における活性点を考察した。
セリア、ジルコニアなどの酸化物は螢石構造の結晶型を取り、酸塩基両性触媒として機能する興味深い酸化物である。これらの酸化物の特徴として、結晶中に螢石構造に由来する大きな空隙を持つことがあげられ、様々な金属酸化物を取込んだ平衡、非平衡固溶体を形成しうる。その触媒能も固溶体形成により様々に変化しうる為、クエン酸錯体法による新規触媒系の探索にもっとも適した系であり、実際に有機合成として工業化が期待される新しい反応プロセスが見出されている。
CVD(Chemical Vapor Deposition:気相蒸着)法は、原料成分を気相から導入し、固体表面に析出させる材料調製法である。この手法を担体に酸化物多孔体などを用いることにより、表面構造の制御された複合酸化物触媒の調製法として応用した。
ホウ素アルコキシドの分解蒸着によりアルミナ、およびシリカを担体とした担持酸化ホウ素触媒を調製し、これらの触媒がシクロヘキサノンオキシムのベックマン転位に高活性であることを示した。またリン酸ホウ素触媒、担持酸化ホウ素触媒の構造をNMRを用いて詳細に検討を行った。
アルミナを担体としてケイ素アルコキシドの分解蒸着を行うことにより、蒸着量と共にアルミナのルイス酸点が消失し強いブレンステッド酸点に転化し、高い酸触媒活性を持つ触媒を調製できることを見出した。
シリカを担体として塩化アルミニウムを蒸着した触媒が、液相におけるベンゼンのシクロヘキシル化に高い活性を示すことをみいだした。蒸着温度により表面の塩化アルミニウムの構造が変化し触媒活性を示す特異な構造があることをNMRを用いて明らかにした。