グラフトって何?

ここでは、我々研究室の“武器”「グラフト」をちょこっと説明します。

「グラフト」って言うのは、元は植木屋さんの言葉で、“接ぎ木”って意味です。接ぎ木とは、ある木の幹から伸びた無駄な枝を切り、代わりに実のなる枝をくっつけることです。

では、我々の言う接ぎ木とはどんなものなのか。答えは、植木屋さんの意味と同じです。つまり、既存の形状の素材(幹)にその物理的特性を損なうことなく様々な機能(実がなる)を付与することです。例をあげると、もとは普通のマスクに花粉を捕まえる機能をもったものをくっつけます。すると、花粉症対策のマスクができあがるというわけです。これを「放射線グラフト重合法」といいます。

もっと難しい例をあげます。平膜や中空糸膜、不織布などの既存の素材にイオン交換基や錯体形成機能を導入することができます。これまで、放射線グラフト重合法を利用した電池用隔膜の合成やクリーンルーム用のケミカルフィルターなどの実用に成功しています。

我々の研究室では、この技術を巧みに利用して海水から有用希少金属の捕集や工業廃液から有害成分の除去、さらにタンパク質の分離精製を目的とした分離機能材料の開発研究を進めています。

下のムービーにグラフト高分子鎖ができるまでのアニメーションが示してあります。是非ご覧ください。

次のムービーは、イオン交換基を持つグラフト高分子鎖を導入した多孔性中空糸膜にタンパク質を透過させたときのタンパク質の吸着の様子を表したものです。実際に目で見えるものではないので、想像でしかありません。あしからず。